一、亭主、座敷の置合等出来たらば、案内の為に潜り戸明けかけ候か、又、鉦、鑵鐘を打つべし。其の時、初めの座入の如く、一人ずつ手水をつかい入るなり。さて、寒天の時は、ぬり片口に、熱湯を半分入れ、石鉢の脇にあるべし。是を、蓋を取りて、手水鉢の水をよい頃にむめ合い、遣うべし。遣い仕廻いて、柄杓の置きよう、元のごとくすべし。
案内の為に潜り戸を明けかけておくのは、腰掛が近い場合の作法で、陸安集が著された当時でも古法とされている作法である。
また、鉦、鑵鐘を打つのは腰掛が遠い場合の茶室の設えが整った事の合図として用いられる。現在では鉦、鑵鐘を用いる作法を伝授する為か、腰掛の遠近を問わず打つ事が多い。
寒天の時、手水を使う際に塗り片口に熱湯を半分入れておき、蓋を開けてその中に水をうめあわせて使うのは当流のみの独自の作法であろう。
この片口は、本来木地で作られた水次を用いるものであるが、古くなったものを塗って手水に利用するとある。
用いる道具は最小限に留め、使い古した道具も再利用して用いるという発想は、エコが叫ばれる現代においてもとても有用であると思う。
柄杓の置き様も、善悪問わず意識して元通りの形に置くべきで、それが亭主への敬意の顕れになる。
一、初座入は、暫く間ありて入るべし。後の座入は、亭主案内ありて、手間取らざるよう入るべし。花の水など、かわかざる内に入る習いなり。客、貴人の時は、此の時も、主迎えに出ずるなり。高声高笑等に、客中乗じて、しらせの声聞き付けぬ事有り。心掛くべき事なり。
初座入りの際は、亭主が迎え付けの後も座敷の清掃をする事があるので、暫く合間をおいて手水を使って席入りするという。
後入りの際は、花や水壺の水滴が乾かぬ内に席入りするべきで、客は手間取ることなく手水を使って席入りする。
当時でも、中立ちの時に話しに盛り上がり、知らせの合図が聞こえない事があったようである。
現在においても然りで、心掛けなければならないであろう。
